③経営数字の整理・分析

社会保険の免除基準を知ろう

社会保険料(国民年金保険料)の免除制度とは

国民年金保険料は、世代・所得問わず定額です。

しかし、国民年金保険料の納付義務期間に職を失った場合や給料をカットされた場合など、保険料を納めることが厳しくなった場合に備え、「免除制度」が設けられています。

ここで注意していただきたいことですが、一般的に「社会保険」という言葉は二通りの意味で用いられています。

ひとつはいわゆる「社保」、つまり、会社員などが加入する健康保険や厚生年金保険を指して用いられる「社会保険」です。この場合における社会保険料の免除に関しては、ここで扱う内容とは全く違いますので混同しないようにしてください。

もうひとつは公的年金・健康保険制度を幅広く指す「社会保険」です。

この意味における社会保険には国民年金が含まれており、この記事ではこの場合の社会保険料免除制度を扱っています。

社会保険(国民年金)の保険料免除制度

保険料の免除制度とは、法律上で当然に保険料が免除される「法定免除」と、申請によって免除される「申請免除」に分かれています。申請免除には「全額免除」や「半額免除」など、条件や免除額に違いのあるいくつかのパターンが用意されています。

なお、いずれの場合も被保険者等(現在被保険者である者・被保険者であった者)が納付を免除された期間において、「保険料を納付します」と申し出た場合は、申し出た期間に係る保険料を納付することができます。

法定免除

第1号被保険者(4分の3免除・半額免除・4分の1免除の適用を受ける被保険者を除く)が、以下の要件のいずれかに該当する場合は、該当日の属する月の前月から該当しなくなる日の属する月までの期間の保険料が免除されます(既に納付された保険料を除く)。

1.障害基礎年金等の受給権者であるとき

障害基礎年金の受給対象となる等級は2級までですが、厚生年金保険法における障害等級は3級まであります。

この場合は障害等級1・2級の受給権者が法定免除の対象となるため、障害が回復傾向を見せ、3級にも該当しなくなった期間が3年続いた場合は、その時点で法定免除の対象ではなくなります。
また、障害基礎年金の受給権者であれば、労災保険の障害(補償)給付を受けている場合でも保険料は免除されます。

2.生活保護法による生活扶助を受けるとき

3.国立ハンセン病療養所や国立保養所等に入所しているとき

申請免除

国民年金の場合、社会保険料の免除申請を行う前に、まず、自分が免除要件に当てはまるかどうかを確認しなければなりません。

要件に当てはまっていた場合には、免除申請を行うことで、指定する期間に係る保険料の免除を受けられます。もちろん、すでに納付した保険料は含まれません。

■全額免除
以下の要件のいずれかに該当する場合は、指定期間の全額免除が行われます。この場合、要件の該当は本人だけでなく、世帯主や配偶者にも及んでいなければなりません。

1.免除対象期間の月が属する年の前年所得が、次に示す金額以下であること
単身世帯……57万円
一般世帯……35万円×(扶養親族等の数+1)+22万円
2.生活保護以外で何らかの扶助を受けている者が世帯のなかにいるとき
3.前年所得が125万円以下の障害者
4.前年所得が125万円以下の寡婦
5.天災や厚生労働省令で定める事由により保険料を納めることが明らかに難しい場合

なお、1月から6月までの保険料については、免除対象期間の月が属する年の前々年の所得で判断されます。これは、以下に記述する他の免除制度(学生納付特例を除く)においても同じです。

■4分の3免除
以下の要件のいずれかに該当する場合は、指定期間の4分の3免除が行われます。
この場合、要件の該当は本人だけでなく、世帯主や配偶者にも及んでいなければなりません。

1.免除対象期間の月が属する年の前年所得が、次に示す金額以下であること
単身世帯……78万円
一般世帯……78万円+38万円×扶養親族等の数
2.全額免除の2~5の要件と同じ

■半額免除
以下の要件のいずれかに該当する場合は、指定期間の半額免除が行われます。この場合、要件の該当は本人だけでなく、世帯主や配偶者にも及んでいなければなりません。

1.免除対象期間の月が属する年の前年所得が、単身世帯では「118万円」以下、一般世帯では「118万円+38万円×扶養親族等の数」以下である場合
2.全額免除の2~5の要件と同じ

■4分の1免除
以下の要件のいずれかに該当する場合は、指定期間の半額免除が行われます。
この場合、要件の該当は本人だけでなく、世帯主や配偶者にも及んでいなければなりません。

1.免除対象期間の月が属する年の前年所得が、単身世帯では「158万円」以下、一般世帯では「158万円+38万円×扶養親族等の数」以下である場合
2.全額免除の2~5の要件と同じ

■学生納付特例
「学生等」であり、以下の要件のいずれかに該当する場合は、学生納付特例を受けることができます。

学生等とは、具体的には大学、大学院、短期大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校高等部、専修学校等の学生・生徒で、定時制や夜間部に通う生徒はもちろん、通信課程であっても申請できます。

なお、学生納付特例は学生本人のみの要件が問われ、世帯主については要件対象外です。

1.免除対象期間の月が属する年の前年所得(ただし、1月から3月までの保険料については前々年の所得)が、単身世帯では「118万円」以下、一般世帯では「118万円+38万円×扶養親族等の数」以下である場合
2.全額免除の2~5の要件と同じ

■納付猶予
20歳から50歳未満の第1号被保険者等で、本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が以下の免除要件のいずれかに該当する場合には、申請し、承認されると保険料の納付が猶予されます。

1.免除対象期間の月が属する年の前年所得が、次に示す金額以下であること
単身世帯……57万円
一般世帯……35万円×(扶養親族等の数+1)+22万円
2.全額免除の2~5の要件と同じ

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まとめ

免除申請をきちんと行なっておけば、免除・猶予期間は受給資格期間にきちんと数えられます。

なお、法定免除の場合、受け取り年金額は、通常の半額(平成21年3月までに免除されていた期間があった場合には、その期間だけ3分の1)です(他の援助制度では減額率が異なります)。

将来の年金額を増やすため、老齢基礎年金の受給権者を除く被保険者等は、納付免除承認日の属する月前10年以内の納付免除期間における保険料を追納することができます。

参考:https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/2127/