退職時の社会保険の手続きについて、どうしたら良いのか分からない人もいるのではないでしょうか。このコラムでは、退職を決めたらやるべき社会保険の手続きや退職後の選択肢、退職日と社会保険料の関係について解説します。社会保険への加入は義務なので、手続き漏れがないように注意しましょう。また、退職時に行う社会保険以外の手続きについてもまとめたので、これから退職を考えている方は参考にしてみてください。
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目次
- 退職が決まったら行う社会保険の手続きとは
- 退職後の社会保険の選択肢
- 退職時の社会保険の手続き方法
- 社会保険料は退職日によって異なる?
- 社会保険だけじゃない!退職時のやることリスト
- 退職後に再就職しない場合に行う手続き
- 退職後の社会保険に関する疑問を解消するQ&A
目次の表示
退職が決まったら行う社会保険の手続きとは
社会保険とは、「健康保険」「年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つを指します。このうち、退職するときに自分で手続きを行う必要があるのは、健康保険と年金保険です。
健康保険の手続きは必須
厚生労働省の「我が国の医療保険について」に明記されているように、日本の医療制度はすべての国民が何かしらの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」です。退職して社会保険の加入資格を失った直後に次の会社で働き始める場合、転職先の健康保険に加入するため、自分での手続きは必要ありません。しかし、再就職までブランクがある場合は国民健康保険や社会保険の任意継続、家族の扶養に入るのいずれかの方法で保険に加入する手続きを自分で行います。健康保険に加入しないと、医療機関を受診した際に医療費の全額を支払わなければなりません。健康保険に加入していれば医療費の自己負担は3割で済むので、退職の際は手続きを忘れないようにしましょう。
参照元
厚生労働省
我が国の医療保険について
厚生年金保険の手続きは将来のために重要
退職する場合は、年金の手続きも必要です。会社員は会社を通して厚生年金(第2号被保険者)に加入しており、退職すると資格を失います。ブランク期間がなく就職する場合は、次の会社で再び厚生年金に加入できますが、すぐに就職しないなら国民年金保険への切り替えが必要です。「数カ月後には就職するから切り替えはしなくても良い」と手続きを怠ると、将来受け取れる年金が少なくなる恐れもあります。「フリーターが加入する年金の種類と未納のリスク」のコラムでは、年金を支払わない場合のリスクを紹介していますので、ご覧ください。年金保険料の「未納期間」を作らないためにも、手続きを忘れないのが大事です。
国民年金保険料は免除や猶予が申請できる退職後は収入がなく、国民年金の保険料を納付するのが難しい方も多くいます。退職のようなやむを得ない事情で納付が困難な場合は、申請により納付を免除・猶予してもらうことが可能です。申請すれば、保険料を納付しなくても将来受給する年金額の2分の1は保障されるため、申請しておくと良いでしょう。日本年金機構の「国民年金保険料の納付が困難な方へ」をご覧ください。
参照元
日本年金機構
保険料の免除・納付猶予制度について
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退職後の社会保険の選択肢
社会保険は企業に所属する人のための制度と、フリーランスや自営業、またはその家族のための制度に分けられます。退職した人は、「フリーランスや自営業、またはその家族」のための制度から、利用可能な保険を選ぶことになるでしょう。
健康保険には3つの選択肢がある
健康保険の選択肢は次の3つです。退職後も2年間は同じ保険を継続できる制度もあります。
国民健康保険に入る
国民健康保険(通称、国保)は、各都道府県と市町村、国民健康保険組合が運営する社会保険です。会社の健康保険に加入していない(任意継続含む)方や家族に扶養されていない方は、国保に加入してください。国民健康保険に加入すると、退職前に比べて保険料の金額が高くなります。給与から天引きされていたのは保険料の一部(残りは会社負担)でしたが、国民健康保険の場合自分の保険料を全額納めなければなりません。また、国民健康保険には扶養の概念がないため、家族それぞれが国民健康保険に加入する必要があります。保険料も一人ひとりに発生するので、負担が増えるでしょう。
家族の扶養に入る
次の条件を満たす人は、家族の扶養に入ることができます。
・年間収入の見込み額が原則130万円未満
・扶養する本人との続柄が3親等以内(本人または配偶者の総祖父母、叔父・叔母など)
たとえば、夫の扶養に入る場合、夫の勤め先で加入している健康保険協会の健康保険に加入することが可能です。その場合、保険料を自分で支払う必要はありません。なお、失業手当は収入として扱われます。支給される基本手当日額が3612円以上であれば、見込み年収が130万円を超えるので、失業手当の金額に注意しましょう。
任意継続する
退職後も、会社で加入していた健康保険を継続できるのが「任意継続被保険者制度」です。退職してから20日以内に手続きをする必要があり、加入期間は退職から2年までとなっています。加入の条件は、退職まで継続して2か月以上の被保険者期間があることです。「任意継続被保険者資格取得申出書」や「被扶養者異動届」などの書類を提出します。ただし、退職前は会社が社会保険料の半額を負担していましたが、退職後は全額を自分で支払うため保険料が上がることを念頭に置きましょう。任意継続については「退職後はどうする?健康保険の任意継続」のコラムでも解説していますので、こちらも併せてご覧ください。
年金保険は2つのうちどちらかを選ぶ
退職後は国民年金に加入するか、配偶者の扶養に入るかを選ぶことになります。配偶者の扶養に入る条件は以下の通りです。
・日本国内に住んでいる(海外在住でも特例として認められる場合もある)
・年間収入の見込み額が原則130万円未満
・扶養する本人との続柄が3親等以内(本人または配偶者の総祖父母、叔父・叔母など)
・自分を扶養する配偶者が厚生年金に加入している
配偶者の扶養に入れば、将来受け取る年金の受給額にも反映されます。扶養家族の定義については「扶養家族とは?対象となる人と適用条件」のコラムで詳しく紹介していますので、ご覧ください。
退職時の社会保険の手続き方法
この項では、社会保険の手続きについて、具体的な方法を解説します。手続きには期限があるので、必要書類や窓口について把握しておきましょう。
国民健康保険に入るための手続き
国民健康保険に加入する際は、退職日の翌日以降に居住地の市役所や町村役場で手続きをします。世帯主が手続きを行う場合、14日以内に必要なものを持参のうえ、役所の保険年金業務担当に提出してください。退職した翌日以降に、下記の持ち物をそろえて役所で手続きを行いましょう。
・マイナンバー(個人番号)が確認できる書類
・本人確認書類
・健康保険等資格喪失証明書(会社や保険組合が発行するもの)
・キャッシュカードまたは通帳と通帳使用印
世帯主以外が新たに国民健康保険に加入する際は、注意が必要です。世帯主が国民健康保険に加入している場合は、世帯主の保険証とマイナンバーも必要となります。
国民年金への加入手続き
国民年金に加入する際には、退職の翌日から14日以内にお住まいの市区町村の役所にて、手続きを行ってください。手続きは本人または世帯主が行います。窓口へ行く際は、基礎年金番号が分かる書類(年金手帳や基礎年金番号通知書など)を持参しましょう。厚生年金と国民年金は退職・転職のタイミングによって、以下のように切り替わります。ここでは、日本年金機構の「会社を退職した時の国民年金の手続き」をもとに表をまとめました。
厚生年金 | 国民年金 | |
---|---|---|
月末に退職 | ~3月31日 | 4月1日~ |
15日に退職 | ~4月15日 | 4月16日~ |
月末退職、16日に入社 | ~3月31日 | 4月1日~4月15日 ※4月16日からは厚生年金 |
引用:日本年金機構「会社を退職した時の国民年金の手続き」
配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先で手続きを行います。配偶者から勤務先の担当部署に連絡すれば良いので、自分で行う手続きはありません。
参照元
日本年金機構
会社を退職した時の国民年金の手続き
社会保険料は退職日によって異なる?
退職日によって社会保険料そのものが変わるわけではありません。ただし、退職日によって社会保険料の資格喪失日が異なるため、最終的な給与天引きのタイミングは変わります。また、次の会社の入社日によっては、健康保険料を二重で支払わなければならない場合もあるようです。
社会保険料は日割りではない
社会保険料は月単位で計算します。日割りではないので、月の途中で退職しても1カ月分の保険料を支払わなければなりません。加入のタイミングも同様です。たとえば、4月10日が入社日の場合、資格取得日は入社日になるものの、保険料は1カ月分を請求されます。4月1日に入社しても、15日に入社しても、金額は同じです。
退職後の社会保険料の支払いはいつまで?
社会保険の資格喪失日は退職日の翌日です。社会保険料は、「退職日の翌日が含まれる月の前の月」まで請求されます。たとえば、4月30日で退職すると、資格喪失日は5月1日です。社会保険料は前の月となる4月分まで支払うことになります。入社日と退職日によって異なる、社会保険料の支払いパターンを以下にまとめました。
社会保険資格取得日 | 社会保険資格喪失日 | 社会保険料が発生する月 | |
---|---|---|---|
4月1日入社・7月15日退職 | 4月1日 | 7月16日 | 4月~6月 |
4月1日入社・7月31日退職 | 4月1日 | 8月1日 | 4月~7月 |
4月1日入社・4月5日退職 | 4月1日 | 4月6日 | 4月 |
上記の表を見ると「月末の1日前を退職日にするとお得なのでは?」と考える人もいるでしょう。上記②のパターンで考えると、7月30日を退職日にすれば、社会保険料は4〜6月分のみで済むからです。しかし、日本は「国民皆保険制度」なので、7月30日に退職した場合は7月31日から国民年金や国民健康保険に加入しなければなりません。国民年金や国民健康保険の保険料は、前の保険の資格を喪失した次の日から発生するので、保険料を支払わなくて良い月が発生するわけではないです。
たとえば、7月30日に退職し、8月1日から新しい会社に転職する場合は、7月31日のために国民年金や国民健康保険への切り替えが必要になります。「1日くらい入らなくても良さそう」と手続きをしないと、将来もらえる年金額が減る恐れがあるため、注意してください。
扶養に入る場合はお得?退職後、配偶者の扶養に入る場合は1カ月分の保険料を自分で負担しなくて良いので、お得という考え方もあります。ただし、扶養先で保険料を負担しているので、保険料が発生していないわけではないことを念頭に置きましょう。
同月内に退職・再就職するなら二重支払いに注意
年金保険料については、月の途中で退職し、同月内に再就職した場合に双方の会社で二重に支払うことはありません。その場合は、新しい会社での引き落としが優先されるため、前の会社で徴収した保険料は還付されます。ただし、健康保険にこのような制度はなく、二重支払いが必要になります。前述のとおり、社会保険料の計算は月単位です。同月内に退職・再就職をすると、健康保険料の支払いが2カ月分になるので注意してください。
社会保険だけじゃない!退職時のやることリスト
会社を退職した際には、社会保険以外にも年金や税金、会社とのやり取りなどやることがたくさんあります。下記を参考に、退職にまつわる手続きをスムーズに進めていきましょう。
退職時に会社に返却するもの
会社を退職するときは、会社から貸与されているものを返却しなければなりません。具体的には、下記のようなものです。
・社員証
・名刺
・健康保険被保険者証
・パソコンや携帯電話などの支給品
そのほか、名刺や文房具といった消耗品も含め、会社に関わるものはすべて返却する必要があります。企画書や報告書など、機密情報や個人情報に関わる重要書類も返却の対象です。また、健康保険被保険者証に関しては、退職した翌日から使えなくなるので、速やかに返却しましょう。
リモートワークでは返却忘れに注意!近年では、自宅で仕事をする働き方が進んでいるため、仕事に関する資料やデータなどを社外に持ち出す機会がある方もいるでしょう。そのため、退職時は仕事に関するものをすべて返却できているのか隅々まで確認するようにしてください。退職日が決まってから片付け始めると、時間が足りずに確認漏れを起こしてしまう可能性もあるので、事前に進めておくのがおすすめです。
退職時に会社側から受け取るもの
退職時に会社から受け取るもののなかには、社会保険の手続きに必要なものもあります。
・離職票
・雇用保険被保険者証
・源泉徴収票
・年金手帳
・健康保険資格喪失証明書
離職票と雇用保険被保険者証は、ハローワークで失業手当の手続きをする際に必要です。雇用保険被保険者証は退職するまで会社が預かっているのが一般的ですが、入社後すぐに本人に返却している場合もあります。
源泉徴収票は、転職が決まっている人は新しい会社で提出を求められるでしょう。次の会社が決まっていない人やフリーランスになる人は、確定申告で自分の所得額を確認する際に使用します。
年金手帳も、転職が決まっている人は新しい会社に提出するのが一般的。厚生年金から国民年金へ切り替える場合は、手続きのために必要です。
「健康保険資格喪失証明書」は社会保険の資格を失った証明になります。この書類は、国民年金や国民健康保険への切り替え手続きに必要となるほか、転職が決まった場合は会社に提出するものです。
これらが返却されているか、退職の際は必ず確認してください。
退職後に再就職しない場合に行う手続き
社会保険のほか会社が給与から天引きして納税していた住民税や所得税に関しては、退職後は自分で納税手続きを行います。
住民税は自分で納税する
住民税は、前年の所得額に応じて納税額が決まる仕組みです。今は退職して収入がなくても、前年に収入があれば住民税の支払い義務が生じます。住民税額決定のスケジュールに伴い、1月から5月に退職した場合は最後の給料の支払いに合わせて、1年分の住民税が徴収されるでしょう。社会保険料とあわせて数カ月分の住民税が天引きされるため、最後の手取り額は少ないことが多いようです。6月以降に退職する場合は、自宅に住民税決定通知書が届くのでそれに従って支払う必要があります。
年度末に確定申告をする
退職した年の年末時点で無職の場合は、翌年の2月から3月に自身で確定申告を行う必要があります。
所得税は、会社員の場合毎月の給与から天引きされ、実際の年収に応じて年末調整を行い納税する仕組みです。退職後、確定申告をしないと所得税を納税しないことになってしまうので、注意しましょう。また、退職後にフリーランスや自営業になった場合も、確定申告は必須です。退職した年内にほかの会社に転職し、年末時点で在籍していれば、確定申告を行う必要はありません。退職した会社の源泉徴収票を提出することで、転職後の収入と合わせて納税してもらえます。
失業手当の受給手続きをする
就職する意思はあるものの、転職先が決まっていない場合はハローワークで失業手当の受給手続きをしましょう。失業手当の手続きをするには、ハローワークの窓口で求職申し込みをする必要があります。その際、離職票と雇用保険被保険者証が必要です。ハローワークでの手続き方法や、そのほかに必要な持ち物について「ハローワークで失業保険の手続きをするために必要な持ち物や書類とは?」のコラムで詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
参考:https://hataractive.jp/useful/3821/