毎年、確定申告書を提出している方であれば「青色申告」「白色申告」というキーワードを目にしたことがあるのではないでしょうか。一般的には税制面で有利な「青色申告」も、費用や手間という面からみれば「白色申告」のほうが有利になるケースがあります。今回は青色と白色の有利不利について解説します。
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確定申告の「青色申告」「白色申告」
確定申告には青色と白色がある
事業を営んでいる個人事業者や、不動産の賃貸で収入を得ている個人の方などが確定申告書を提出する際には「決算書」を添付しなければなりません。
「決算書」とは、事業や不動産賃貸などで一年間に得た収入金額と、収入を得るために支出した必要経費を集計して所得金額を計算する書類です。納付する所得税を計算するためには、はじめに所得金額を算出しなければなりませんので、税額計算をするために必須となるものです。
「青色申告」であれば「青色申告決算書」、「白色申告」であれば「収支内訳書」がこの決算書にあたります。
確定申告をする際は、ここで作成する決算書が青色なのか白色なのかによって申告区分が変わってくることになるのです。
「青色申告」と「白色申告」の違いとは?
はじめに「青色申告」と「白色申告」の違い について、代表的な項目を決算書を中心に対比してみましょう。
青色申告 | 白色申告 | |
---|---|---|
提出する決算書 | 青色申告決算書 | 収支内訳書 |
決算書の作成方法 | 複式簿記により作成 | 簡易簿記(単式簿記)により作成 |
保存書類 | 総勘定元帳 仕訳帳 現金出納帳 売掛帳・買掛帳 固定資産台帳 などの帳簿 貸借対照表・損益計算 棚卸表 請求書・領収書 納品書・送り状 などの書類 | 法定帳簿(収入金額、必要経費を記載した帳簿) 現金出納帳 売掛帳・買掛帳 固定資産台帳 などの帳簿 棚卸表 請求書・領収書 納品書・送り状などの書類 |
青色申告特別控除 | 適用あり | 適用なし |
特別償却・税額控除 | 各種適用あり | 適用なし |
純損失の繰越 | 3年間繰越可能 | 原則として繰越不可 |
親族に対する給与 | 青色事業専従者給与 | 事業専従者控除 |
対比表からもわかるとおり、青色申告には様々な特典やメリットが用意されています。
「青色」と「白色」を分けるポイントは決算書の作成方法にあります。
白色申告で作成する決算書は簡易簿記(単式簿記)と呼ばれる、単純な簿記により収入金額や必要経費を集計する方法です。
家計簿をイメージしてもらえば分かりやすいですが、例えば売上高であれば「何月何日に誰にいくら売上した」ということを単純に集計していくだけです。
売上高
日付 | 得意先 | 金額 |
---|---|---|
1月10日 | A商店に現金売上 | 100,000円 |
2月15日 | B株式会社に掛売上 | 200,000円 |
3月31日 | 株式会社Cに掛売上 | 150,000円 |
合 計 額 | 450,000円 |
必要経費も同様に、支出した金額を勘定科目ごとに集計していくだけですから簿記の知識がなくても比較的誰でも記帳することができます。
これに対して、青色申告で作成する決算書は複式簿記による作成が求められます。
複式簿記を簡単にいえば、収入金額や必要経費だけではなく、資産や負債についても正規の簿記によって紐づけ管理する記帳方法です。
上記で例示した簡易簿記の処理を複式簿記により記帳してみます。
借 方 | 貸 方 |
---|---|
現金 100,000円 | 売上高 100,000円 |
売掛金 200,000円 | 売上高 200,000円 |
売掛金 150,000円 | 売上高 150,000円 |
複式簿記で処理することにより売上高は勿論のこと、現金や売掛金についても管理することができますから、損益計算書だけではなく貸借対照表も作成可能です。
「青色申告」のメリットとデメリット
「青色申告」をするメリット
では「青色申告 」をするメリットについていくつか挙げてみましょう。
1.青色申告特別控除
青色申告のメリットとして挙げられる代表的なものに「青色申告特別控除」があります。
事業所得や不動産所得は通常「収入金額-必要経費」で求められます。しかし、青色申告であればここからさらに一定額を引き算することができます。
収入金額 - 必要経費 - 「青色申告特別控除額」
「青色申告特別控除額」にはいくつか要件がありますが、最大で65万円の控除を受けることができます。所得税の税率が仮に20%であれば「65万円×20%×1,021%」で約133,000円の税額を節税できます。また、住民税についても併せて「65万円×10%=65,000円」の節税が可能となります。
2.特別償却・税額控除
青色申告者の特典として、次のような税法上の優遇措置があります。
- 事業に供した固定資産を割り増しして必要経費とすることができる→特別償却
- 30万円未満の固定資産を購入した場合、300万円まで全額必要経費とすることができる→少額減価償却資産の特例
- 給与等の支払が前年比で増加した場合→税額控除
これらの特典は、白色申告者には適用されません。
3.純損失の繰り越し
青色申告者が所得を計算した結果、赤字を計上した場合、これを翌年以降3年以内に発生した黒字と相殺することができます。
もし当年分で黒字を計上した場合、白色申告であれば消えてしまった過去の赤字を使って相殺することができますので、節税につながります。
「青色申告」をするデメリット
このように、青色申告者には税法上様々な形で優遇措置があります。しかし、先にも述べたとおり青色申告には「複式簿記による帳簿作成」が求められます。したがって「商業簿記」の知識がなければ複式簿記の処理をすることができません。
さらに2023年(令和5年)10月から「消費税インボイス制度」が施行され、消費税の課税事業者となる方が増えることが予想されます。
複式簿記で消費税計算も必要になれば、税法の専門的知識がなければ青色申告の要件を満たすのは非常に難しくなります。結果として、、外部の税理士や会計士に記帳業務を依頼する必要性が出てくるので、事業にかかる必要経費が増加することになります。
「白色申告」でも損をしないケースとは?
「青色申告」は必ずしも有利とは言い切れない
このような事務負担や費用負担の増加を勘案した場合、青色申告がはたして本当に有利なのか?という疑問が生じます。
結論から言えば、「白色申告」のほうが損をしないというケースがあります。
「白色申告」が有利になるケースをいくつか挙げてみましょう。
1.所得が赤字、あるいは少額であるケース
青色申告最大のメリットは「所得を少なくできる」という点です。逆に言えば、 で今後3年間は黒字になる見込みがないケース、あるいは黒字が少額である方には青色申告の恩恵が少ないということです。
恩恵が少ないのであれば、敢えて事務負担や経費負担が増加する青色申告にするメリットは少ないでしょう。結果「白色申告」のほうが損をしない場合もあります。
2.親族を従業員にしていないケース
親族を従業員にして給与を支払っている場合、青色申告であれば労働の対価として相応の範囲であれば全額を必要経費とできます。これを「青色事業専従者給与」と呼びますが、親族を雇用していなければこの青色事業専従者給与の特典はありません。
青色申告のデメリットを増やすより、白色申告のままのほうが損をしない場合もあります。
事業規模が小さい人は白色申告を
記帳や申告を税理士や会計士に全て丸投げすれば手間は省けますから事務負担は減ります。しかし税務のエキスパートに依頼するのですから費用負担は決して安くはありません。
青色申告により数万~数十万円の節税をするために、それ以上の費用をかけていたのでは本末転倒です。
事業規模が小さい、収益が少ない、親族に給与を支払っていないなど、青色申告の恩恵が少ないようなケースでは敢えて必要経費を増やさず、白色申告をしたほうがメリットが出る場合もあります。
参考:https://www.all-senmonka.jp/moneyizm/75711/